新型コロナ景気後退で経営者が今やるべき5つのこと

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が、早くも経済的打撃に次の波をもたらしています。国や地域によっては外出禁止、在宅勤務の徹底など、経済行動を制限する動きが始まり、各国の株式市場においても打撃になっています。ニューヨーク株式市場では、3月9日月曜日の取引開始直後から株価指数が急落し、売買が一時停止。この日はダウ工業株も終値が歴史的な急落を見せ、その後もリーマンショック時を上回り、1987年10月19日の「ブラックマンデー」以来の下落率を記録しました。景気悪化への懸念が広がり、依然として不安定な値動きを続けています。

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少なくとも1年間、高い可能性で3年間は、私たちの買い物、旅、仕事の進め方を変化させるでしょう。いつ明けるかわからない経済暗雲をどう乗り切るか、企業経営者にとっては正念場です。一ヶ月前と同じビジネスモデルを今日も使えるとは考えられない状況の中で、何を切り捨て、何を残すべきか、経営者は救命艇の支度をする時を迎えています。短期間のうちに人件費やその他の経営コストを見直し、いかに早期に手を打っておくかは非常に重要です。なんとかこのままやり過ごせるのではないかと、コストへのメス入れを怠り、放置することは、沈みゆく船の上で自ら救命艇を破壊するのと等しいでしょう。

そして、やがて訪れる景気回復期に向けて、今この瞬間に何ができるのかを戦略的にイニシアチブを取って動く時でもあります。いますぐやるべきこととは一体何か、考えてみましょう。

1.リーダーシップでチームを創造的に協働させろ

 現在の新型コロナウイルスの問題が今後も長引くのであれば、現状の固定化した組織構造はもはや通用しなくなります。動的でアジャイル型のチーム形成への移行が主流となります。まさにアダプティブ(変化に適応できる)なチームビルディングとマネジメントが、重要なポイントになるでしょう。

世界中で大規模にリモートワークが、それも一気にスタートするのは前例のないことです。シリコンバレーのメガベンチャーさえ、オフィスからしかアクセスしてはならない情報の取り扱いに困窮し、大きなディスプレイを使ったプログラミング業務では、すべてのエンジニアの自宅にディスプレイを配送することが間に合っていいないのが現状です。

けれど、変化への適応を軽視する組織は、この新型コロナショックにおいてますます状況が悪化して行くでしょう。マネジメントコントロールの喪失、不確実性への対応力欠如、社員の驚きと困惑による時間ロス、通常のルーチンを逸脱した緊急対応による混乱などです。

社員を混乱の中でも前向きに動かし、ルーチンやスキルのコントロールを取り戻すためには「経営者自身が前向きである」姿勢を示すことが非常に重要です。

 その上で、このような働く環境の提供が必要になります。

・組織の中に危機管理チームを作り、常に最新情報を元に迅速な方針決定をする

・豊富なコミュニケーションや定期的な社員への状況説明

・従業員がどのように会社と社会に貢献できるかという使命と価値観の重視

・各マネジメントレベルからの現場社員へのコミュニケーション

・社内の組織や役職を越えた情報交換

・柔軟な勤務場所とスケジュール、生活のニーズに合わせた始業終業

・迅速な決定を下すための、現場への権限委譲

・目標の明確化、単に費やした時間ではなく、結果と影響の測定で、裁量を与えること

これらの働き方を通じながら、今の困難にモヤモヤするのではなく、未来に注意が向けることで、チームメンバーは革新的な良いアイデアのためにブレインストーミングを重ね、お互いの団結を高めることにつながるのではないでしょうか。さらには、今だからこそできる組織変革の最大のチャンスと捉え、動いていくべきでしょう。そして、その鍵を握るのは、実は中間管理職の意識と行動の変容なのです。

 2.組織全体での率直な会話を促せ

この危機の中で、組織全体を機能させるために、率直な会話が回るサイクルを意図的に構築できているでしょうか。人は悪いニュースは積極的に伝えるどころか隠しがちになりますが、これは長い目で見て決して得策ではありません。真実を語りあい、適切な対策を講じながら、メンバーと共にビジネスを進めていくことが求められます。

これにより、経営陣は重要な情報を常に手元に置くことが可能となります。つまり、社員からの信頼と、経営としてのコミットメントがものを言うのです。

こうした組織のあり方は、心理的安全性が構築されているチームでのみ機能します。リーダーが、チームメンバーのアイデアはもちろん、懸念や悪いニュースについて話すことを受け入れ、むしろ歓迎するスタンスがあるからと言えます。

マネジメントにおいても同様です。より現場側の情報やアイデアを積極的に求めるマネージャーのもとに情報は自然と集まってきます。新型コロナウイルス問題は、企業にとって前代未聞の危機であると同時に、マネージャーがチームメンバーとの信頼に基づくカルチャーを、迅速に構築する大きな機会でもあります。コーチングをベースにしたインタラクティブな会話の機会を増やして行くことで、一層、お互いを知り合うことにつながります。反対に、組織全体での率直な会話がなされない場合、信頼をベースとするカルチャーづくりは限りなく遠のいて行くのです。 

3.新しい働きかたの中で、プライオリティマネジメントをせよ

 危機的状況の中で在宅勤務が始まり、これまでのオフィス勤務に比べて業務のリズムがかなり狂ってくることは当然です。自宅で仕事を始めても、集中力を保つための環境が乏しかったり、空気を読まないメンバーからの連絡で業務が中断することは度々です。

さらに、新型コロナウイルスに伴う経済活動の変化、政府や行政による生活への制限など予期せぬ事態により、仕事の内容や重要度、必要性までもが流動する可能性をはらんでいるのです。

つまり、どんな時でも従業員を取り巻く状況と変化の流れに、より敏感になり、業務のプライオリティと意義を常に考察し、コラボレーションのパターンを考え続けなくてはなりません。

 すべての会議、メール、チャットツールやドキュメント共有ツールを棚卸ししつつ、抱える業務の責任とプロジェクトのコミットメントを再考することで、時間をどのように過ごすのかについて、より集中的かつ意図的になることができます。新型コロナ危機の前は、もしかしたら多くの会議や大量のメール処理で過負荷に感じ、責任とコミットメントをもって仕事をする時間がなかったことに気づくかもしれません。在宅勤務への移行は、プライオリティを検討し、それらを達成するための新しいスケジュールを設計する機会にもなります。

 特にこの危機の間、最適な役割についてチームメンバーと話し、他の人の役割にどのように適合しているかを把握して、連携を保つようにします。このような会話をしてみましょう。

「あなたの最も重要な目標は何ですか?」

「あなたやあなたのチーム、そしてあなたの組織にとって、To Doリストのどのアイテムを優先し、どれを完全に達成するべきですか?どれを捨てるべきですか?」

「特別なタスクの実行、プロジェクトの管理、リーダーシップを通じた人々のインスピレーション、困難な時期のコミュニティと仲間意識の構築などの重要な対策に最も価値をもたらすのはいったい何ですか?」

 例えば、コミュニケーションやコラボレーションワークのパターンをリセットすることです。Web会議やテキストベースのコミュニケーションなどの共同作業を、自分の役割に合わせて再設計し、それぞれの仕事により集中できる活用方法を決めていきます。また、適切なステークホルダーやチームへのコミットメントを明確にし、必要に応じて交渉し、招待されたすべての会議に参加するのではなく、意図的選択します。

4.組織のサイロを壊し、職場のカルチャーを変革せよ

 もしも今の組織が縦割りでサイロ化されているならば、もっと横串しでコミュニケーションを図るべきです。サイロに閉ざした組織で、限られた少数の利害関係者のみに注意を払うことは、全体の脆弱性につながるからです。「組織をオープンに!」と言った瞬間に、グローバルなビジネスや社外とのオープンコラボを想像する人が多いでしょう。ただ、自組織と隣接するチームとのコミュニティづくりにも、組織強化は大きくかかっています。そのようなチーム間を越えたコミュニティはお互いの組織ミッションの方向性を共有し、共に危機を乗り越えて行くことが求められるます。こうした動きを自然に行う人を「越境型人材」と言います。組織に限った話ではなく、異なる領域や専門性、さらにはコミュニティを越えてつながりあい、相互の利害を意識しながらより良い方向を見出していけるからです。そして、さまざまななステークホルダーと共に計画を立て、お互いから知識やノウハウを獲得し、この新型コロナウイルスの危機が収束を見せた時に、すぐにビジネスに戻るための友好的な協力を発揮してくれるでしょう。

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同じことが企業外のサプライチェーンとの関係構築でも言えます。ビジネス基盤となる地域の経済発展や教育を通じて、地域および地域のサプライヤーの成長を促進することで、地域のエコシステムが豊かになります。すでにパンデミック宣言がさた今、企業が地場の公衆衛生システムの妥当性や、医療へのアクセシビリティ、緊急保育の利用可能性などの問題解決に貢献することで、地域社会サプライチェーンとの友好な関係構築につながるのです。

 5.困った時はお互い様。パートナーやステークホルダーと利害を一致させろ

 新型コロナウイルスの急速な広がりは、これまでいかに日常生活やビジネスが安定した中で機能していたかを思い出させます。そして、この危機に直面して、私たちが企業の垣根を越えて、互いに助け合う意欲と能力を明らかにしていると感じます。この状況が正常に戻ったときにこそ、助け合いがつないだコミュニティがビジネスを後押しするでしょう。

先進的なリーダーは、自社の利益を優先させる前に、顧客やパートナーやその他のステークホルダーを巻き込み、利害を一致させるための発想や取り組みを考え、より良い組織運営に導きます。この結果、関係者全員のエクスペリエンスが向上します。

しかし、生産的な取り組みを妨げる障壁もあります。「支援できない」「支援の方法がわからない」「支援が重要だと信じていない」の3つです。

逆に、顧客との相互支援に成功した経営者は、3つの障壁すべてを克服する方法を見つけることになります。例えば、航空会社が着陸前に飛行機の清掃に参加するように乗客全員に呼びかける方法です。着陸前の最終アプローチの間に、客室乗務員がゴミや未使用のアイテムを通路の乗組員に渡すことです。さらに、乗客が次のフライトの定刻出発を達成するためにいかに清掃員の助けになっているかを説明することで、協力を仰ぐことができます。そして、乗客は喜んで役割を果たします。

1つの注意点として挙げられるのは、顧客が支援する理由が主に収益性を高めることであると思われる場合、手を貸して欲しいという要求は不誠実であり、場合によっては組織の目的に反する行動につながる可能性があります。しかし、企業の関与が、顧客自身や他のステークホルダーにとって広く役立つことが明らかな場合、ほとんどの人が喜んで関与してくれます。

顧客やパートナーが役立つ具体的な方法を特定し、何ができるかについて明確な指示を提供し、すべての関係者にプラスの変化をもたらす理由を明確にすることが重要です。ビジネスリーダーは顧客やパートナー、そして従業員を含むステークホルダーの間の相互作用を改善するチャンスを迎えています。

 過去を遡って見てみると、今の新型コロナショックと同じくらいの変化の波は、女性が始めて重工業業界に参入した第二次世界大戦でした。激化する戦況に合わせるように、軍需工場での労働力不足を瞬時に補うために、わずか数日の間に女性労働者が投入され、これまでの労働力の勢力図を塗り替えたという歴史があります。まさに今、世界が直面している危機的状況には共通点があるのではないでしょうか。経営者がより速く動く方法を学び、機敏な行動を取ることで、リモートワークへのシフトはもとより、変化に柔軟に対応できる組織体質への転換を行う絶好のチャンスになっていると言えるでしょう。

ひょっとしたら、長く寒い冬の訪れかもしれません。しかし、冬が永遠に続くことはないということを忘れてはいけません。冬の時代においても、次の世代のために種を蒔き続けましょう。

今できることは、今。Now or Never!

Twitter/Facebook: @piotrgrzywacz

執筆協力:星野たまえ(プロノイア・グループ)

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