上司の仕事をなくせ!テレワークで自分をマネジメントせよ

スタートアップに引けを取らない、圧倒的パフォーマンスを手に入れろ

東京オリンピック・パラリンピック大会の予行演習のはずが、予期せぬ新型コロナウィルスの影響で、早々にテレワーク本番を迎えている企業も少なくありません。まさに、テレワークの真価が試されています。

ここで問題になるのが、「本当にテレワークで生産性が上がるのか?」です。そもそも、海外では20年前からテレワークをすることが当たり前で、社員に、よりパフォーマンスを発揮してもらうための働き方として取り入れられてきました。一方、日本ではこれまで、育児や介護など、ワークライフバランスを目的に一部の社員に「テレワークや在宅勤務を適応せざるをえない」のがスタート地点でした。これらの日本企業にとっては、従業員の大多数でテレワークを実践するのはこれが初めてになるかもしれません。ルーチンワークや持ち帰り業務に限定することなく、さまざまな領域の仕事やマネジメント業務がテレワークで本当にできるのでしょうか?そしてこのテレワークブームを機に、大・中小企業で働く社員のみなさんも、スタートアップに引けを取らない圧倒的パフォーマンス力を手にできるチャンスがあります。

1.自分のマネージャーになる

「上司に仕事を振られたら反射的にがんばることをやめる」

今の世の中、やれと言われたことを全部こなすのは、現実的に無理です。Todoリストを作ろうと思えば、無限にリストを増やすことができるでしょう。でも肝心なのは、組織や自分のプライオリティがどこにあるのか、ということです。自動化できるものは自動化する(AIを使わなくてもマニュアル化でできます)。自分がやらなければならないことも、優先順位が高いほうから時間やエネルギーを割けるように取捨選択して、ムダな作業を無くしていく。そんな時に必ず、上司を説得する段階が生じます。

もし、新しい仕事や、新しいプロセスを自発的にやろうとしたら、

「あの仕事はどうしたんだ?」

「なぜ、そんなことをしてるんだ?」

と上司は怒るかもしれません。

しかし怒られることが悪いとは、僕は思わないのです。

例えば、仕事の進捗が遅れていることについて上司がイラっとしても、

「今は別の仕事を優先するべきだと思います。その理由は○○です。それでも、例の件を急いだ方がよいでしょうか?」

と、きちんと説明できることが大事だと思っています。

むしろ、圧倒的に仕事ができる人は、上司に散々怒られる人であることが多いのは事実です。前例がないことをしようとすれば、前例を重んじる組織と軋轢が生じるのは、当然のこと。しかし、圧倒的なアウトプットは、前例がない仕事からしか、生まれません。

ひとまず怒られてもいいのです。圧倒的なアウトプットで、上司を説得することはできます。

テレワークで見えない環境で部下が働いているからといって、Webカメラでチェックしたり、定期的に報告を上げさせるようなマネジメントはあまりオススメしません。働く環境づくりや時間配分など働き方のマネジメントを部下が試行錯誤してみることで、はじめて、仕事のやり方や優先順位を意識して、最小限のエネルギーで最大の効果を生み出そうという工夫が生まれます。ぜひ、上司のみなさんには、部下に自分でやらせてみる、考えて見せることをお願いしたいです。テレワークをきっかけに、ひょっとしたら部下に細かい指示も管理もしなくても、自発的に業務をこなせるよう育成のチャンスになるでしょう。

「楽をするほどチャンスは大きくなる」

ときおり、聞いてもいないのに、「きのうは3時間しか眠れていなくて…」「夏休みも取れないんだ…」などと誇らしげに語り、自分の忙しさや頑張っていることをアピールするのが好きな人がいます。でもそれは、仕事の意味やインパクトの大きさを考えずに不要な仕事にまで手をつけて、Todoリストをいっぱいにしているだけかもしれません。

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僕だって忙しく働いていますし、時にはストレスをためることもあります。でも、忙しさアピールとは無縁です。僕には、心からやりたい仕事がたくさんあります。また、インパクトを出すためには考えなければならないこと、やらなければならないことがたくさんあり、そのために忙しいのです。「結果を出すため」です。

忙しさアピールの裏には、「自分は忙しいんだ、がんばってるんだ」と上司の目に届くようアピールすることで、評価してもらおうという魂胆があるかもしれません。「そこまで必要とされるぐらい、自分は優秀なんだ」というわけです。

現場レベルのメンバーでいるうちは、それでも忙しさアピールが通用するかもしれません。「よくがんばっているな」と評価してもらえるかもしれません。でもそれがいつまで続くでしょうか。

ポジションが上がるにつれ、忙しくすることより、結果そのものを求められるようになることは避けられません。テレワークならばなおさらです。何しろ、目の前に上司がいないわけですから、忙しさアピールを伝えるのも一苦労です。むしろ、見えていなくてもしっかり結果を出してくれる、そんな働き方こそが評価につながるのではないでしょうか。

日本企業には「がんばります」という精神論が根強いようです。僕は「いいえ、頑張らないでください!」と言いたいです。がんばる前に、とりあえず落ち着いて、頭の整理をしてから動いて欲しいです。「がんばる」と「頭の整理をする」は対照的な概念です。「がんばって頭の整理をする」とは言いませんから。

それに、余裕なく働いていると、せっかく目の前に現れたチャンスも、取り逃がしてしまいます。チャンスは突然やってくることが多い、だからこそ、仕事に余裕があるかどうかで、その後のキャリアの明暗が分かれる可能性もあるのです。目の前の仕事だけでなく、キャリアも、自分でマネジメントすることにつながります。

2.完璧を目指すよりまず終わらせろ

ーDone is better than perfect! Facebook CEO マーク・ザッカーバーグ

「今どれだけ仕事を進めることができるか」と考える習慣は、仕事ができる人になる最短の道です。

たとえば10枚のスライド作成が必要なのだとしたら、最初のスライド1枚のデザインに凝ったりせず、10枚のスライドの全体構成をラフに作成することです。まず頭の整理をして仕事の準備をしなければ、集中して仕事をするどころではありません。いくら時間があっても足りなくなります。結局、ここも見ておかなければいけなかった、 調べなきゃいけなかったということになります。「パーフェクト」は最悪な基準なのです。

「言葉よりもプロトタイプでやりとりせよ」

コミュニケーションは、コストにもメリットにもなります。ムダなコミュニケーションは何も生み出しませんが、プラスに働けば、一足飛びに大きな結果を生み出すこともあります。昨今はメールやチャット、ビデオ会議などさまざまなコミュニケーションが、ビジネスシーンでも当たり前に使えるようになって来ました。テレワークだからこそ、これらのリモートをつなぐコミュニケーションを適材適所で利用することで、パフォーマンスアップの可能性が生まれます。

例えば、日程調整ならカレンダーアプリ、議事録ならその場でみんなで作成するなど、メールではなく現物でやりとりして仕事を速く進める方法を紹介しましょう。

こうした、言葉ではなく「試作品」でやりとりする方法を「プロトタイプシンキング」と言います。プログラマーの世界では、「ここにこういう機能をつけて…」と説明するよりも、実際にそのプログラムを作ってしまう方が速いことが結構あるのです。こうすると、それぞれの認識の違いがなくなるので、やり直しもなく、仕事がスムーズに行きます。

このやり方は他の仕事でも応用できます。

仕事の依頼があった場合、こちらから何点か質問をした後、「つまり、こういう感じではないですか?」というドラフトを描いて、見せてしまうのです。そこで、「これは違う」とか、「そうそうそんな感じ」という感触をつかんでおけば、その後、やり直しを命じられたり、ムダな仕事をすることもなく、最短で仕事が進められます。何より、コミュニケーションで進めるチームワークと、一人で集中して取り掛かる仕事を明確に切り分けることで、スプリントでの仕事の準備にもつながるわけです。

3.エネルギーをチャージする良質な食事・睡眠・運動の習慣

オフィスワークじゃないからこそできることもあります。例えば、食事や睡眠、適度な運動を業務の間に挟むことで、心身ともにエネルギーをチャージしながらテレワークに取り組むことが可能になります。「成果が出ないとサボっていたと思われちゃう」なんて焦って、がむしゃらにテレワークをしている人もいるのではないでしょうか?ここでは心と体の健康を日々のサイクルの中で整えて行く方法を見てみましょう。

「良い食習慣をつくる」

最近の栄養学の研究によって、私たちは何を食べれば健康的で高いパフォーマンスを出せるのかがわかってきました。例えば、炭水化物を控えめにして、タンパク質と野菜をしっかり摂ることなど、毎日の食事で実践できそうなものもあります。

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また、食事のタイミングも重要です。テレワークだからこそ普段とは違う、ランチのお店が充実したエリアで仕事をする機会も出てきます。そんな時、「うわ、今日はラーメン食べたいな〜!一緒に餃子とチャーハンもつけよう!」などとなってしまいがちではないでしょうか?空腹の時は人間は冷静ではいられませんから、これが健康にいいとか食べ過ぎるのはよくないと思っていても、なかなか歯止めをかけることができません。

それを避けるには食事を分けてバランスよくとることです。コンビニで少しだけ買って、近くの公園で食べてみるのもリフレッシュ効果があっておすすめです。

「仮眠はパフォーマンスアップに効果的」

スペインなどでは長めの昼休み「シエスタ」をとることは有名です。この時間帯を昼寝にあてる人も多いですが、昼寝と聞くと、「仕事中になんてのんきな!」と感じる人もいるかもしれません。実はとても合理的な行動なのです。

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人間のサーカディアンリズム、いわゆる体内時計は概ね24時間周期になっており、午後2〜3時くらいに活動が低下すると言われています。昼食を食べたかどうかに関わらず、この時間帯は眠くなりますが、無理に頑張ろうとするより10〜20分くらい仮眠をとるのがパフォーマンスアップには効果的です。逆に、仮眠を30分以上とると深い睡眠状態に入ってしまい、そこで起きるとだるさが残るため、パフォーマンスアップには逆効果です。

仮眠をとっている余裕がないというのであれば、椅子に座って深呼吸しましょう。そして、じっと目を閉じて、雨音や川のせせらぎをスマートフォンアプリで聴いて心を落ち着けるだけでも、ずいぶん効果があります。瞑想と仮眠の中間くらいの休息です。

「仕事中に運動を取り入れる」

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立ったり歩いたりすることもできるだけ増やすといいでしょう。例えば電車でも、メールなどの用事があれば座り、そうでない場合は意識的に立つのも大事です。

在宅勤務であれば、業務が一区切りつくタイミングに洗濯物を干したり、掃除機をかける、また家の周りをぐるっと歩いてみるだけで違います。

4.自ら集中力を高める

テレワークの中でも、特に在宅勤務は仕事とプライベートが時間的にも環境的にも隣り合わせ。だからこそオンとオフの切り替えを行い、集中して業務に取り組むための支援が必要になります。これは、スプリントで業務を集中して行うためのフロー状態(ゴルフで言えば「ゾーンに入る!」と言われるものですね)を意図的に作ることで解決できます。

「圧倒的な集中力を得るための基本動作」

・業務に関係ないブラウザやタブは閉じる

・不定期にメールを見ない

・最低限のアウトプットを決めておく

・必要なものはすべてそろえておく

これらを守ることが大事です。

メールはすぐに返信しなくてはならないと思っている方も多いのですが、「急ぎのことがあれば電話してください」とあらかじめ宣言してしまうことが大事です。

「スプリントを意識した1日のスケジュールを描く」

・机の上に置くのは必要なものだけ

・必要な情報だけが目に入るようにする

・90分単位で業務を区切る

人が持続的に集中力を保つのは平均して90分程度と言われています。業務に入る前にきちんと必要なことを考えてから集中しないと「これはなんだったけ?」と途中で作業も集中力も途切れてしまう原因になります。

「今この瞬間に集中する」

マインドフルネスで言われる「今この瞬間」への集中とは、妄想ではなく目の前の現実と向き合うことを意味します。脳科学的には、人間は「今この瞬間」しか認識できません。過去のことを思い出したり、将来のことを考えたりするのは認識ではなく、言ってみれば妄想です。頭の中で妄想を巡らせて、意識があっちに行ったりこっちに来たりしていては、目の前の仕事に集中することはできません。

テレワークや在宅勤務では、コワーキングオフィスに集う人々に関心がいったり、自宅ならばそばにいる子供のことなど、仕事への集中を妨げる要素がたくさんあります。しかし、こんなことに脳のリソースを割いている暇はありません。

「今すぐやる」人たちは、その前提として、目的志向で動いています。長時間ダラダラと仕事をするということではなく、「今のこの瞬間」に最大のパフォーマンスを発揮するために、目の前の課題をしっかり分析して、何のためにその問題に取り組むのか、いつまでに答えを出すのか、目的とゴールを設定してから全力で取り組んでいます。

さいごに 〜サラリーマンの裁量が最大化されるのは、アフター5〜

先週の金曜夜に繁華街を歩いていましたが、どの居酒屋もサラリーマンでごった返していたんです。「え!新型コロナウィルスの影響で、どこもかしこもテレワークだったんじゃ?」と思わず目を疑いました。なんだかんだ、実際にはみんなオフィスに来て、帰り際に仲間といっぱい引っ掛けて、という感じだったんですね。そしてそのイキイキした表情やエネルギーが、仕事にも向いていればオフィスだろうがテレワークだろうが、パフォーマンスはぐんぐん伸びるのに、と複雑な気持ちになりました。

テレワークとはみなさんにとってどんな意味を持つでしょうか。ただパソコンを持ち歩き、どこでも仕事ができる働き方改革の一つに過ぎないのではないでしょうか。僕は、テレワークとは、ただ単にモバイルワークではなく、個人が自分をマネジメントできる状態を指すと考えます。

かつては階層型の組織構造が主流で、業務指示はトップからマネジメントへ、マネジメントから現場へとカスケード(滝が落ちる)で伝達されていました。「上から言われたことは絶対」の文化ですから、個人の感情よりも上意下達の指示が優先されます。ですが、まさに今、イノベーティブな企業体質への転換が求められる中で、会社の掲げるビジョンやミッションに共感すれば、テレワークでサボるわけないです。きっとみなさん、楽しんで仕事をしてくれるはずと信じています。そして、新型コロナウィルスが1日も早く収束することを祈っています。

あなたのテレワーク武勇伝、ピョートルに聞かせてください!

Twitter/Facebook: @piotrgrzywacz

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